Nikkei Genai Sum 2026 Report
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2026年10月5日(月)に開催された日本経済新聞社主催「 日経 生成AIサミット(GenAI/SUM 2026) 」に、Upstage 共同創業者兼CEOのSung Kimと、日本法人 代表取締役 カントリーマネージャーの松下紘之が登壇しました。講演タイトルは「 日本の現場は、もっと強くなる ― 文書に眠るデータを、成果に変えるAI 」です。 「AIを導入するかどうか」は、もう問いではありません。問われているのは、 「AIでどう成果を出すか」です 。講演では、この問いにUpstageがどう向き合っているのかをお話ししました。 なぜUpstageは生まれ、なぜ日本なのか ― 国の知を担うAI 登壇者:Upstage 共同創業者兼CEO Sung Kim(オンライン登壇) 「AIのブレイクスルー」と「ビジネスの成果」のギャップを埋める Sung Kimは香港科技大学(HKUST)の教授を経て、NAVERとLINEでAI組織の立ち上げを率いてきました。そこで痛感したのは、優れたAI技術が数多くあるのに、それが現実のビジネスの成果に結びついていないという事実でした。 研究のブレイクスルーと、ビジネスの成果。その間にあるギャップを埋めたい。それがUpstageを創業した理由です。 2020年に創業したUpstageが最初に取り組んだのが、Document AIです。人類の知識の多くは、文書の中に閉じ込められています。その文書を理解して必要な情報を高い精度で取り出し、さらにその情報を行動につなげるために開発したのが、LLM「 Solar 」です。こうした取り組みが評価され、UpstageはAmazonおよびAMDからも出資を受け、ユニコーン企業へと成長しました。 小さくても強い、「自分たちのモデル」 Solarは比較的小さなモデルでありながら、高い性能を発揮しています。米Artificial Analysisの指標では、2026年3月の「Solar Pro 3」の14から、5か月後の「Solar Pro 4」では42へと 約3倍に向上 しました。OpenRouterでは クローズドモデル第3位 の利用量となり、世界中の開発者に使われています。 ただし、Sung Kimが強調したのはスコアそのものではありません。 モデルを自分たちで持っていること の意味です。自社でモデルを保有しているからこそ、性能・コスト・セキュリティ・導入形態・ロードマップを、お客様のニーズに合わせてコントロールできます。お客様ご自身の環境の中で動かすことも可能です。
優れたモデルは「第一歩」にすぎない Solarは、韓国政府の「ソブリンAI基盤モデル」プロジェクトのもとで開発されています。約15社から段階的に絞り込まれる中で、Upstageは上位3社に選ばれ、 スタートアップとして唯一 残っています。 しかし、本当の挑戦はその先にあります。 毎日の業務で、実際に使われること です。例えば韓国では、国家の研究開発(R&D)予算の審査で初めてAIが使われ、それがSolarで動いています。機密性が高く、クラウドのAPIには送れない情報ですが、オンプレミスで動かせるSolarであれば扱うことができました。政府・産業界・研究者が一緒に取り組んで、はじめてAIは本当に役立つものになる。Sung Kimはそう強調しました。 韓国のスピード × 日本の深さ ― 日本で、次のエンタープライズAIを共につくる Sung Kimは、「LLMは単なる機械ではなく、その国の精神を宿すもの」だと語ります。だからこそ、すべての国が自国のAIを持つべきだと考えています。自国のモデルを持ち、自国で使い、使われるほどさらに良いモデルを育てていく。この好循環(フライホイール)がなければ、他国のモデルに頼ることになり、より良いモデルを自ら育てる機会を失ってしまいます。そのうえでSung Kimは、Upstageの役割を 「すべての国が自国のAIを持てるよう支援すること」 だと語りました。 では、なぜ日本なのか。Sung Kimは、日本が文書・レガシーシステム・業務プロセスにおいて、非常に深い専門性を持っている点を挙げました。そこに眠る知をUpstageの技術で取り出せば、生産性と精度を高めながら、セキュリティも担保できます。韓国の開発スピードと、日本の産業の専門性・高い品質基準。この2つを掛け合わせることで、重要な業務にも使える、信頼されるAIをつくれると考えています。 講演資料でも「韓国のモデルを売るのではなく、日本のお客様・パートナーと一緒につくる」と示したとおり、Sung Kimは日本のお客様・パートナーの皆様と一緒に、 日本で次のエンタープライズAIを共に築いていきたい と語りました。日本は、Upstageが米国と並んで最初期に海外法人を設けた国の一つでもあります。単なるベンダーではなく、長期的なパートナーでありたい。これが、Sung Kimから日本の皆様へのメッセージです。 日本の現場は、もっと強くなる ― 文書に眠るデータを、成果に変えるAI 登壇者:Upstage AI株式会社 代表取締役 カントリーマネージャー 松下 紘之 日本の現場の強さが、非効率を見えなくしてきた 松下は、日系メーカーで約10年、製造の現場や開発に携わってきました。その後Amazon Web Servicesでは、日本政府を含むミッションクリティカルなワークロードを持つお客様に、グローバルの技術とベストプラクティスを届けてきました。そして現在は、Upstageの日本法人を率いています。 その経験に共通する学びは、 日本の現場が持つ国際競争力の高さ です。製造・物流、金融・小売、公共・医療。どの業界でも、日本の現場の力は誇るべきものです。ただし、その強さには「もう一つの顔」があると指摘しました。 日本は、「優秀な現場の人たち」に支えられてきた。その強さが、非効率を見えなくしてきた。 読みにくい書類を読みこなし、「暗黙知」や「職人技」で業務を完了させる。仕組みを変えなくても、現場がなんとかしてきた。それが、これまでの日本の素晴らしい成果を支えてきました。 数字が示す、日本の「これから」 では、このままでよいのでしょうか。講演では3つの数字をご紹介しました。 2040年、働き手が1,100万人不足 :東京都の人口とほぼ同じ規模(リクルートワークス研究所「未来予測2040」) 2075年の日本のGDPは、世界4位にも、11位にもなる :現状の延長なら11位。AIなどで改革できれば4位を維持(日本経済研究センター、日本経済新聞 2025年6月12日報道) 生成AIで「期待を大きく上回る効果」があった企業は、日本でわずか9% :米国は38%、英国は32%(PwCジャパングループ2026年版調査、日本経済新聞 2026年6月11日報道)
これまで現場が吸収してきた非効率は、人が減れば、そのまま社会課題として現れます。AIは「あれば便利なもの」ではなく、 導入し、成果を出さなければならないもの になっています。 一方で、松下はこの数字を悲観的には捉えていません。むしろ「伸びしろ」だと考えています。先行する米国や韓国では、議論はすでに「AIを導入するかどうか」ではなく、「AI導入でどう成果を出すか」に移っています。そして、成果を出すために最も重要なのが、 「業務完結」と「経営判断」に使えるデータを整えること です。
企業データの8割は、まだAIから見えていない 本来、人の時間は付加価値の高い「判断」や「意思決定」に使われるべきです。しかし現実には、その前段階の「紙の処理」に多くの時間が奪われています。IBMによれば、企業データの 80%がいまだに非構造化データ です。またIDCの調査では、 74%の企業 がいまだにドキュメントを手作業で処理しています。これは日本だけの課題ではありません。 PDF、メール、契約書、稟議書、事故報告書、点検記録、手書きの帳票、図面。企業活動の一次情報のほとんどは、こうした形式の定まらない文書として蓄積されています。しかしAIはそのままでは読めず、 「眠っている社内資産」になっています 。AI活用の議論は、残りの2割の構造化データの上でだけ行われているのです。 ここで松下は、会場に問いかけました。社内に眠る紙の文書は、「AI-Ready」な状態になっているでしょうか。 経営が知りたい答えは、システムではなく文書の中にある では、文書の内容をシステムに入力すれば、AIで活用できるのでしょうか。保険の「事故報告書」を例に考えてみます。システムに残るのは、損害額や発生日、事故区分といった一部の項目だけです。発生に至る経緯や、担当者が抱いていた懸念、その対応を選んだ理由は、文書の中にしか残りません。 数字は検索も集計もできますが、「なぜそうなったか」は分かりません。しかも、人が文書を読んで転記している間に、現場はすでに次の局面に進んでいます。つまり経営者は、「一部の」「古い」データで判断せざるを得ないのです。 経営が本当に知りたいことは、いつもシステムに入らなかった側に残っています。 そこでUpstageがご提案するのが、文書が生まれたその場で構造化することです。システムに入った一部の数字だけでなく、文書に書かれたすべての情報を、最新の状態で判断に使えるようにする。これが、AIを活用するための前提条件になります。 AIは、蓄積したデータを忘れない ここで、もう一度「2040年に1,100万人が不足する」という数字を思い出してください。人の記憶は、時間とともに薄れていきます。担当者が異動したり退職したりすれば、判断の根拠も過去の経緯も、組織から静かに消えていきます。一方で、一度構造化した文書は、組織の記憶として残り続けます。取り込むほど判断の土台は厚くなり、AIは同じ精度でそれを参照できます。 文書からのデータ構造化は、効率化の手段であるだけでなく、人が減っていく時代に組織の知を残し続けるための手段でもあります。 とはいえ、現場の文書は一筋縄ではいきません。1,000枚を超える大量の文書、署名や印鑑のある様式、表の中に表がある複雑なExcel、斜めにスキャンされたPDFなど、日本の現場には「非定型」で「大量・複雑」な文書があふれています。Upstageの強みは、こうした文書を、エンタープライズが求める水準でAI-Readyな状態にできることです。 韓国での成果を、日本企業へ ― 「精度の沼」から抜け出す 韓国では、すでに多くの企業で成果が出ています。例えばサムスン生命様では、データ構造化によって保険金支払業務を年間11,000時間削減し、書類の処理・分析にかかる時間も20分から1分に短縮しました。この成果を、どのように日本企業に展開していくのか。 Upstageは現在、製造・金融・公共のお客様と大きなプロジェクトを進めています。そこには共通の「形」があります。それは、 AIに任せられる作業と、「人にしかできない判断」を切り分ける設計です。 これまでは、「精度が100%でなければ使えない」という「精度の沼」にとらわれ、すべてを人が照合してきました。これからは、まずAIが書類を全件照合し、差異とその根拠を人に渡します。人は、HITL(Human-in-the-Loop)やHOTL(Human-on-the-Loop)など、業務に合った形で判断に加わります。 「人が確かめる」ことは弱点ではなく、それを含めた業務設計こそが、成果へのカギになります。
まとめ 講演の最後に、松下はSung Kimのパートと自身のパートに共通するメッセージをまとめました。冒頭でお伝えしたとおり、問われているのは「AIを導入するかどうか」ではなく、「AIでどう成果を出すか」です。そのために必要なのは、「どのモデルが一番賢いか」を比べることよりも、次の3つだと考えています。 文書をデータとして構造化し、それを軸に業務を設計すること 構造化したデータを、将来の競争力となる「情報資産」として積み上げること AIの使い方を、自分たちでコントロールすること
現場に眠るデータを、「経営の意思決定」と「現場の業務変革」へ。松下は次の言葉で講演を締めくくりました。 文書の山に、「答え」があります。 まずは、御社の「文書の山」のお話から Upstageが日本で目指しているのは、AIを売ることではありません。 日本の現場が積み上げてきた知を、文書の中から取り出し、未来の競争力に変えていくこと です。そしてそれを、お客様やパートナーの皆様と長期的に一緒につくっていくことです。 自社の文書はAI-Readyな状態になっているのか。どの業務から始めれば成果につながるのか。機密性の高いデータを自社でコントロールできる環境で扱えるのか。こうした問いが少しでも頭に浮かんだら、ぜひ一度Upstageにご相談ください。答えは、すでに御社の「文書の山」の中にあるかもしれません。 👉 お問い合わせはこちら
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